架電・トークの実務

アポから商談化率を上げるには|質の高いアポの条件・トーク・見直しの手順

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • 商談化率を上げるには、アポの件数を追う前に「どんな状態のアポを商談と呼ぶか」を、インサイドセールスとフィールドセールスで同じ言葉で定義しておくことが出発点です。
  • 質の高いアポとは、相手が課題を自分の言葉で話していて、商談の目的に合意しており、検討の時期や関係者がある程度分かっているアポです。
  • 商談化しなかったアポは理由を分類して記録し、ターゲット・ヒアリング・アポ獲得時の合意・引き継ぎのどこに原因があるかを特定すると、打ち手が具体的になります。

結論:商談化率は「アポの定義」と「振り返り」で上がる

アポから商談化率を上げるために最初にやるべきことは、「どんな状態のアポを質が高いと呼ぶのか」をインサイドセールスとフィールドセールスで定義することです。そのうえで、商談化しなかったアポの理由を記録し、アポの取り方を見直していきます。

商談化率が低いとき、現場では「アポの質が悪い」「商談の進め方が悪い」と、インサイドセールスとフィールドセールスがお互いの責任にしてしまうことがあります。しかし、そもそも両者が考える「良いアポ」の基準がずれていれば、どちらが頑張っても数字は改善しません。

なお、「商談化」の定義も会社によって異なります。初回の打ち合わせを実施できたことを商談化と呼ぶ会社もあれば、次回の提案や見積りに進んだことを商談化と呼ぶ会社もあります。本記事では、初回の打ち合わせの後に、具体的な次のステップ(提案・見積り・デモなど)に進んだことを商談化として説明します。自社の定義は、最初にはっきりさせておいてください。

商談化率の改善は、アポを取る側と商談する側が「同じ物差し」を持つところから始まります。

質の高いアポの4つの条件

商材によって細部は変わりますが、質の高いアポには共通する条件があります。次の4つを目安に、自社の基準を作ってみてください。

条件具体的な状態確認できていない場合に起きやすいこと
課題が具体的相手が困っている場面を、自分の言葉で話している商談で「特に困っていない」と言われ、話が進まない
目的に合意している商談で何を話し、何を持ち帰るかを相手が理解している「情報収集だけのつもりだった」と言われ、次のステップに進まない
時期の見込みがあるいつごろまでに解決したいか、その理由が分かっている「いずれ検討します」で止まり、追客が長期化する
関係者が見えている話した相手の立場と、判断に関わる人がある程度分かっている商談の後に「上に相談します」で止まり、決裁者に届かない

すべての条件が完全にそろう必要はありません。ただ、どの条件が確認できていて、どれが未確認なのかを、アポを渡す時点で明らかにしておくことが大切です。未確認の条件が分かっていれば、フィールドセールスは商談の冒頭でそこを確認できます。

筆者は人材紹介ITサービスのBDR支援で1日1件のアポを獲得していましたが、件数を増やすことと同じくらい、渡すアポの状態をそろえることに注意を払ってきました。件数だけを追うと、上の条件が欠けたアポが増え、結果的に商談の時間を圧迫するからです。

質の高いアポを取るためのトーク

アポの質は、電話を切る直前の数十秒で大きく変わります。日程を決める前に、課題と目的を相手の口から確認するのがポイントです。

課題を相手の言葉で確認する

「ここまで伺ったお話を整理させてください。拠点ごとに在庫の数え方が違っていて、月末に本社で集計し直すのに時間がかかっている、ということでしたね。ほかにも気になっている点はありますか。」

商談の目的と持ち帰るものを合意する

「次回の打ち合わせでは、拠点ごとの集計をそろえる方法を具体的にお見せします。御社の運用に合いそうかどうか、その場で判断していただける材料をご用意しますので、合わないと思われたら遠慮なくおっしゃってください。」

時期と関係者を確認する

「もし進めるとなった場合、いつごろまでに形にしたいといったご希望はありますか。」

「判断の際に、ほかに関わられる方がいらっしゃれば、最初の打ち合わせにご一緒いただくこともできます。」

「合わないと思われたら遠慮なく」という一言は、遠回りに見えて商談化率の改善に役立ちます。相手が身構えずに参加でき、本音の課題を話してもらいやすくなるからです。

商談当日までにインサイドセールスができる準備

アポを取ってから商談当日までの間にも、商談化率を左右する工程があります。インサイドセールスが次の準備を担うと、商談の最初の数分で本題に入れるようになります。

  • 事前の質問を送る:アポ獲得後のメールで「当日までに、現在の運用で特に負担が大きい作業を1つ思い浮かべておいていただけますと、より具体的なご提案ができます」のように、相手に考えておいてほしいことを1つだけ伝えます。相手が準備して参加すると、商談の中身が具体的になります。
  • 相手企業の情報をまとめる:事業内容、拠点、最近のニュースなど、架電時に調べた情報を商談担当者が読める形にまとめておきます。
  • 未確認の条件を明記する:質の高いアポの4条件のうち、確認できていないものを書いておき、商談の冒頭で確認してもらうよう依頼します。
  • 相手の言葉をそのまま残す:「月末は本当に手が回らない」など、相手が使った表現をメモに残すと、商談担当者は相手の温度感をつかみやすくなります。

相手から見ると、電話で話した内容が商談で正しく引き継がれていることは、それだけで信頼につながります。反対に、電話で話したことを一から聞き直されると、「この会社に任せて大丈夫か」と不安を与えてしまいます。商談化率は、商談の場だけでなく、その手前の準備でも決まっていきます。

商談化しなかった理由を分類する

商談化率を改善するには、商談化しなかったアポの理由を分類して記録します。自由記述だけだと集計できないため、次のような区分を決めておくとよいでしょう。

理由の区分例見直す場所
ターゲット外規模や業種が合わず、導入の前提を満たさなかった架電リストのターゲット定義
課題が浅い商談で課題を深掘りしたが、困りごとが小さかったヒアリング項目と見極め基準
目的の認識ずれ相手は情報収集のつもりで、検討する意思がなかったアポ獲得時の合意トーク
時期が先課題はあるが、検討は来期以降育成への切り替え基準
関係者不在判断する人がおらず、話が止まった関係者の確認と同席の依頼
引き継ぎ不足ヒアリング内容が伝わらず、同じ質問を繰り返した引き継ぎのルール

理由の記録は、商談を担当したフィールドセールスが行い、インサイドセールスと定期的に一緒に見るのが理想です。どの区分が多いかが分かれば、改善すべき工程が明らかになります。たとえば「目的の認識ずれ」が多ければアポ獲得時のトークを、「ターゲット外」が多ければリストの条件を見直します。

商談化率を上げる改善サイクル

  1. 定義をそろえる:「アポ」「商談化」「質の高いアポの条件」を言葉で決め、両チームで共有します。
  2. アポを渡すときに状態を記録する:4つの条件のうち、確認できたものと未確認のものを記録してから渡します。
  3. 商談後に結果と理由を記録する:商談化したか、しなかった場合はどの区分かを記録します。
  4. 定期的に振り返る:週1回などのペースで、商談化しなかったアポを数件取り上げ、獲得時の録音やメモと照らし合わせます。
  5. 1つずつ変える:トーク、リスト、渡す基準のうち、変える場所を1つに絞って試し、結果を比べます。

振り返りの場では、個人を責めるのではなく、仕組みのどこを直せばよいかに焦点を当てます。インサイドセールスにとっても、自分が取ったアポがどうなったかを知ることは、次のアポの質を上げる一番の材料になります。

注意したいのは、商談化率だけを目標にすると、インサイドセールスが確実なアポだけを渡すようになり、件数が減りやすいことです。商談化率と、アポの件数、最終的な受注の両方を見ながらバランスを取ることが大切です。

外部に任せる場合の考え方

アポ獲得を外部に任せる場合、アポの件数だけを成果指標にすると、質の低いアポが増えて商談化率が下がることがあります。依頼前に「アポの定義」と「質の高いアポの条件」を取り決め、商談化しなかった理由を共有できる体制をつくっておくことが大切です。

株式会社リクエッジの商談創出パッケージ(目安として10万円〜/月+アポ1件1.5万円〜、税別・個別見積り)でも、アポの定義と渡す基準を最初に一緒に決めてから架電を始めています。

よくある質問

アポの件数と質は、どちらを優先すべきですか?

立ち上げ期は件数を確保しながら質の基準を固め、基準が固まったら質を重視する、という順番が現実的です。どちらか一方だけを追うと、件数が足りないか、商談の時間を無駄にするかのどちらかになりやすいため、両方を見ながら調整します。

商談化率は何%を目標にすべきですか?

商談化の定義や商材、リードの種類によって大きく変わるため、一般的な目標値を当てはめるのはおすすめしません。まず自社の現状を同じ定義で測り、その数字を基準に改善していくのが確実です。

インサイドセールスとフィールドセールスの意見が合わないときは?

どちらが正しいかを議論するより、商談化しなかったアポを数件取り上げ、獲得時の記録と商談の結果を一緒に確認するのが効果的です。事実をもとに話すことで、基準のずれがどこにあるかが見えやすくなります。

資料請求から取ったアポは質が低いのでしょうか?

資料請求は情報収集の段階であることも多いため、課題や時期を確認せずにアポを取ると、商談化しにくいことがあります。資料請求者でも、ヒアリングで課題と目的を確認したうえでアポを取れば、質の高いアポになり得ます。