運用・マネジメント

インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎ方法と項目例

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎは、「どの状態になったら渡すか」「何を渡すか」「渡した後に何を返すか」の3つを決めることで機能します。
  • 引き継ぎ情報は、相手の課題や検討状況を「相手の言葉のまま」残すことが重要で、これがあるだけで商談冒頭の聞き直しと温度感の低下を防げます。
  • 商談結果をインサイドセールスに返す仕組みがないと、引き継ぎの基準もアポの質も改善されないため、フィードバックの流れまでを一つの業務として設計します。

結論:引き継ぎは「基準・情報・フィードバック」の3点セットで設計する

インサイドセールス(IS)が獲得した見込み客を、フィールドセールス(FS)に引き継ぐ場面は、分業型の営業で失注が起きやすいポイントの一つです。ISが電話で丁寧に聞き出した課題がFSに伝わっていなかったり、まだ検討が浅い段階の見込み客が渡されてFSが困ったりと、引き継ぎの不備は商談の質に直結します。

引き継ぎを機能させるには、次の3つをあらかじめ決めておく必要があります。

  1. 基準:どの状態になったら、ISからFSに渡すのか
  2. 情報:引き継ぐときに、何を、どの形式で渡すのか
  3. フィードバック:商談の結果を、FSからISにどう返すのか

筆者はKDDIで大手企業向けの提案営業や、仕様策定から契約締結、社内調整までを担う企画営業を経験しました。関係者が多い営業ほど、情報が人から人へ渡るたびに少しずつ抜け落ちていきます。ISとFSの引き継ぎも同じで、「言わなくても分かるだろう」を前提にせず、仕組みとして決めておくことが大切です。

引き継ぎの基準を決める

最初に決めるべきなのは、ISがどの状態になったら見込み客をFSに渡すかという基準です。基準があいまいだと、ISはアポ件数を優先して早めに渡し、FSは「まだ商談の段階ではない」と不満を持つ、というすれ違いが起きます。

基準は、ISとFSが一緒に決めることが重要です。代表的な確認項目を整理します。

確認項目基準の例満たさない場合の扱い
課題自社商材で解決できる具体的な課題が確認できているISで情報提供を続ける
関与者相手が導入の判断に関わる立場、または判断者を把握している判断者との接点づくりを優先する
時期検討の時期がおおよそ分かっている再アプローチの予定を立てる
商談の合意相手が商談の目的を理解し、日時に合意している商談の目的を改めて説明する

すべてを満たさなければ渡せない、という厳しすぎる基準にすると、ISの手元に見込み客が滞留してしまいます。必須の項目と、あれば望ましい項目を分けておくと、運用しやすくなります。

早すぎる引き継ぎ・遅すぎる引き継ぎ

引き継ぎが早すぎると、FSは情報収集の段階の相手と話すことになり、商談の時間が無駄になりがちです。一方で、ISが慎重になりすぎて引き継ぎが遅れると、相手の関心が薄れたり、その間に他社との検討が進んだりします。相手から「詳しい話を聞きたい」「見積りが欲しい」といった具体的な要望が出たときは、基準の一部が未確認でも、速やかにFSへ渡すほうがよい場面もあります。こうした例外の扱いも、ISとFSで事前に話し合っておきましょう。

基準は一度決めたら終わりではありません。商談結果を見ながら、ISとFSで定期的に見直していきます。基準をどう定めるかは、アポの定義を決める作業とも重なります。

引き継ぎシートの項目例

引き継ぐ情報は、口頭やチャットの一言で済ませず、決まった形式で残します。CRMの項目として設定しておくと、担当者が変わっても情報が失われません。以下は引き継ぎシートの項目例です。

  • 企業の基本情報:企業名、業種、規模、所在地
  • 相手の情報:氏名、部署、役職、判断への関わり方
  • 接点の経緯:架電・問い合わせ・展示会など、どこから接点が生まれたか
  • 課題:相手が話した困りごとを、できるだけ相手の言葉のまま
  • 現状:今使っている手段やサービス、他社の検討状況
  • 時期と予算:検討の時期、予算の有無や決め方(分かる範囲で)
  • 判断の流れ:誰が関わり、どのように決まるか
  • 相手の関心:特に知りたがっていたこと、気にしていたこと
  • ISの所感:温度感、話しぶりから感じた懸念点
  • 商談の設定:日時、形式(訪問・オンライン)、参加予定者

「相手の言葉のまま」残す理由

課題の欄に「業務効率化に関心あり」とだけ書かれていても、FSは何を提案すればよいか分かりません。「月末に3つの管理画面からデータを出して集計するのが大変、と話していた」と書かれていれば、FSは商談の冒頭からその話題で入ることができます。ISが要約しすぎず、相手の具体的な表現を残すことが、引き継ぎの質を大きく左右します。

商談前の連携と、商談冒頭の入り方

引き継ぎシートを渡したあとも、商談までの間にやっておきたいことがあります。

商談前の連携

  • ISからFSへの一言共有:シートに書ききれなかった温度感や注意点を、短く口頭やチャットで補足します。
  • 相手への事前連絡:商談の前日などに、日時と当日の内容を確認するメールを送ります。ここでFSの名前を伝えておくと、担当が変わることへの違和感が小さくなります。
  • FSの準備:シートの課題をもとに、当日見せる資料や事例を選んでおきます。

相手への事前連絡の例

「先日はお電話でお時間をいただきありがとうございました。明日の打ち合わせは、弊社の営業担当の高橋が担当いたします。お電話で伺った月末の集計作業の件を中心に、実際の画面をご覧いただきながらご説明します。」

商談冒頭の入り方の例

FSは商談の冒頭で、ISから聞いた内容に触れることで、相手に「話が伝わっている」と感じてもらえます。

「先日、弊社の山本とのお電話で、月末に複数の管理画面から集計されているのが大変だと伺いました。今日はその点を中心にお話しできればと思いますが、ほかにも気になっていることはございますか。」

このように、引き継いだ内容を確認したうえで、相手に補足の機会を渡すと、聞き直しの印象を与えずに情報を深められます。

商談結果をISに返すフィードバックの仕組み

引き継ぎで見落とされがちなのが、FSからISへの逆方向の流れです。ISは、自分が渡した見込み客が商談でどうなったかを知らなければ、引き継ぎの基準もヒアリングの内容も改善できません。

フィードバックは、手間をかけずに続けられる形にすることが大切です。

商談結果FSが返す内容ISの次の動き
次の段階に進んだ進んだ理由、決め手になった情報同じ傾向の見込み客を優先する
保留保留の理由、再検討の時期時期に合わせて再アプローチを計画する
見送り見送りの理由(課題がなかった、判断者でなかった、など)ヒアリング項目や基準を見直す

保留や見送りになった見込み客を、ISに戻して再びフォローする流れを決めておくことも重要です。商談で「今期は難しい」となった見込み客でも、時期を記録して適切なタイミングで連絡すれば、将来の商談につながる可能性があります。

よくあるトラブルと対策

よくあるトラブル原因対策
商談で相手が「何の打ち合わせか分からない」と言う相手が商談の目的に合意していないアポ確定時に目的を言葉で確認し、事前連絡でも伝える
FSが電話の内容を聞き直してしまう引き継ぎ情報が不足している、FSが読んでいないシートの必須項目を決め、商談前に確認する習慣をつくる
FSが「質の低いアポ」と不満を持つ引き継ぎの基準がISとFSで共有されていない基準を一緒に決め、商談結果をもとに定期的に見直す
保留になった見込み客が放置される保留後の担当が決まっていない保留はISに戻すなど、担当と次のアクションを決める

どのトラブルも、ISとFSのどちらかだけの問題ではありません。定期的に両者で引き継ぎの状況を振り返る場を持つことが、最も効果的な対策です。

外部に任せる場合の考え方

ISを外部に依頼する場合、引き継ぎの相手は社内のFSになります。社外と社内の間で情報が渡るため、引き継ぎシートの項目、基準、フィードバックの流れを、契約前の段階ですり合わせておくことがより重要になります。

リクエッジでは、リードの見極めとヒアリングの設計を重視し、FSが商談の冒頭から本題に入れる引き継ぎを意識した支援を行っています。

よくある質問

インサイドセールスはどのタイミングでフィールドセールスに引き継ぐべきですか?

自社の商材で解決できる課題が確認でき、相手が商談の目的に合意した段階が一つの目安です。具体的な基準は、ISとFSが一緒に決め、商談結果を見ながら見直していくことをおすすめします。

引き継ぎシートには最低限何を書けばいいですか?

相手の情報、課題、現状、判断の流れ、商談の設定の5つは最低限入れておきたい項目です。特に課題は、要約しすぎず相手の言葉のまま残すと、商談の冒頭で活用しやすくなります。

ISが商談に同席したほうがいいですか?

必須ではありませんが、関係づくりが重要な商材や、ISとの会話で相手が多くを話してくれた場合は、冒頭だけ同席して紹介する方法もあります。同席しない場合は、事前連絡でFSの名前を伝えておくと担当交代の違和感を減らせます。

FSが商談結果をなかなか返してくれません。どうすればいいですか?

記入の手間を減らすため、「次の段階へ・保留・見送り」の選択と一言の理由だけを返す形にするのがおすすめです。CRMの項目として設定し、週次の振り返りで確認すると習慣化しやすくなります。