架電・トークの実務

架電記録とCRM入力のルール|引き継ぎで失注しない書き方と必須項目

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • 架電記録の目的は「次に動く人が、記録だけで会話の続きを始められること」であり、日報のための記録ではありません。
  • CRM入力は「ステータス」「次回アクションと期日」「相手の言葉」の3点を必須にすると、引き継ぎでの取りこぼしが大きく減ります。
  • ステータスの定義を言葉で決め、全員が同じ基準で選べる状態にしないと、どれだけ入力しても数字が信用できなくなります。

結論:架電記録は「次の人が続きを話せるか」で判断する

架電記録とCRM入力のルールで最も大切なのは、記録を読んだ別の担当者が、そのまま次の電話をかけて会話の続きを始められるかどうかです。入力項目の数や文章の丁寧さではありません。

インサイドセールスで失注が起きやすいのは、担当交代、フィールドセールスへのトスアップ、外部委託先から自社への引き継ぎといった「人が変わる瞬間」です。前任者の頭の中にしかない情報は、引き継いだ瞬間に消えます。相手から「前の方にもお話ししたんですが」と言われた時点で、信頼は一段下がります。

そのため、記録のルールは次の3つに絞って考えるのが実務的です。

  1. 状態がわかる:今どの段階にいるリードなのか(ステータス)
  2. 次がわかる:誰が、いつ、何をするのか(次回アクションと期日)
  3. 中身がわかる:相手が何を言ったのか(相手の言葉と温度感)

この3点が揃っていれば、ツールがスプレッドシートでも専用のCRMでも、引き継ぎは機能します。逆に、ツールが高機能でもこの3点が欠けていれば記録は役に立ちません。

CRMに残すべき必須項目と任意項目

入力項目は多ければよいわけではありません。項目が多すぎると入力が後回しになり、結局「空欄だらけのCRM」になります。まずは必須項目を最小限に決め、運用が回ってから任意項目を足すのがおすすめです。

区分項目入力のポイント
必須架電日時・担当者自動記録できるなら手入力させない
必須通話結果不在/受付NG/本人接続/アポ獲得など、選択式で統一
必須ステータス定義表にある選択肢からのみ選ぶ
必須次回アクションと期日「再架電 ◯月◯日 午前」のように具体的に
必須話した相手氏名・部署・役職。受付の方の名前も残す
必須会話メモ相手の発言をできるだけそのまま書く
任意課題・検討状況現状の運用、困りごと、比較中のやり方
任意決裁の流れ誰が決めるか、稟議の有無、時期
任意つながりやすい時間「火・木の夕方は在席」など

受付の方の名前と、つながりやすい時間帯の記録は軽視されがちですが、次の架電の接続しやすさに直結します。「前回◯◯様にご案内いただいた件で」と言えるだけで、取り次ぎがスムーズになることは現場でよくあります。

ステータス定義を言葉で決める

記録が機能しない現場でよくある原因の一つは、ステータスの意味が人によって違うことです。ある人は「資料送付を了承された」を見込みとし、別の人は「具体的な検討時期が出た」を見込みとする。これでは、集計した数字も、優先順位づけも信用できません。

ステータスは、必ず判定条件を文章で定義し、迷ったときに参照できる場所に置きます。以下は一例です。

ステータス判定条件(例)次の動き
未接触まだ一度も架電していないリストの優先順に架電
接続不可不在・受付NGが続いている時間帯を変えて再架電
情報収集本人と話せたが、現時点で課題や検討予定はない情報提供を続け、時期を空けて再接触
検討中課題があり、時期または比較対象について具体的な発言があった期日を決めて追客
アポ獲得日時と参加者が確定し、招待を送付済みフィールドセールスへ引き継ぎ
対象外業種・規模などが明確に条件外架電停止(理由を記録)
連絡停止希望今後の連絡を断る意思表示があった全チャネルで連絡停止

特に「連絡停止希望」は他のステータスと分けて管理してください。誤って再架電やメール送付をすると、相手に不快な思いをさせるだけでなく、会社としての信用問題になります。

会話メモの書き方:要約より「相手の言葉」

会話メモは、担当者の解釈ではなく相手が実際に言った言葉を優先して残します。「前向き」「温度感高め」といった主観的な表現は、書いた本人にしか意味がわかりません。

悪い例

  • 「興味ありそう。また連絡する」
  • 「資料送付。温度感は中」

よい例

  • 「今期は別施策で手一杯。来期の予算組みが1月なので、12月に一度話を聞きたい、とのこと。比較対象は自社採用の増員」
  • 「資料はメールで。上長の◯◯部長に回すと言っていた。送付後、来週水曜の午後に確認の電話を入れる約束」

よい例は、読んだ人が次の電話で何を話せばいいかが明確です。たとえば次のように切り出せます。

「先日お電話した際に、1月に来期の予算を組まれるとお伺いしていたので、その前に一度情報をお渡しできればと思いご連絡しました」

この一言が言えるかどうかが、記録の質の差です。

会話メモのテンプレート例

書き方が人によってばらつく場合は、メモ欄に次のような型を用意しておくと揃いやすくなります。

  • 【相手】氏名・役職/決裁への関わり
  • 【現状】今のやり方、使っている手段
  • 【発言】印象に残った相手の言葉(そのまま)
  • 【時期】検討時期・予算の話が出たか
  • 【約束】こちらがやると言ったこと
  • 【次回】日付・時間帯・話す内容

すべてを毎回埋める必要はありません。空欄は「まだ聞けていないこと」の一覧になるので、次の電話で何を確認すべきかが自然に見えてきます。

メモは長文である必要はありませんが、「誰が」「何を」「いつまでに」の3点が入っているかは必ず確認してください。

通話を録音している場合でも、要点のメモは必要です。録音を聞き直す時間は通常の業務の中ではほとんど取れないため、録音は「確認用の証跡」、メモは「次の行動のための情報」と役割を分けて考えます。

引き継ぎで失注しないためのチェックリスト

担当交代やフィールドセールスへのトスアップの前に、次の項目を確認します。全部が埋まっていない場合は、引き継ぎ前に補完するか、不明であることを明記します。「わからない」と書いてあれば次の担当が聞けますが、空欄のままだと聞き漏らします。

  • 相手の氏名・部署・役職、決裁者かどうか
  • 相手が話した課題(相手の言葉で)
  • 検討時期、予算の有無、比較している手段
  • こちらから約束したこと(資料送付、日程調整、確認の電話など)
  • 相手から言われた注意点(「電話は午前中に」「メールは上長もCCで」など)
  • 次回アクションの期日と担当者
  • アポの場合:日時、参加者、オンラインか訪問か、事前に伝えた議題

特に見落とされやすいのが「こちらから約束したこと」です。インサイドセールスが「詳しい担当から事例をお送りします」と伝えていたのに、引き継ぎ先がそれを知らずに放置すると、相手からは約束を破った会社に見えます。

マネージャーやSVが日々の記録を確認する際も、入力の細かさより「次回アクションの期日が入っているか」「約束事が記録されているか」の2点を優先して見るのが効率的です。全項目を毎回チェックするのは現実的ではありませんが、この2点だけなら短時間で確認でき、取りこぼしの多くを防げます。

入力ルールを定着させる運用のコツ

ルールを作っても、入力されなければ意味がありません。定着させるための工夫を挙げます。

  1. 入力は通話直後に:まとめて夕方に入力すると、細かい発言を忘れます。1件ごとに1〜2分の入力時間を、架電計画にあらかじめ含めておきます。
  2. 選択式を増やし、自由記述を絞る:通話結果やステータスは選択式にし、自由記述は会話メモだけにすると負担が減ります。
  3. 期日切れを毎朝確認する:次回アクションの期日を過ぎたリードを一覧で出し、その日の最初に処理します。
  4. 定例でメモを読み合う:週に一度、数件の記録をチームで読み、「この記録で自分は続きを話せるか」を確認します。

外部に任せる場合の考え方

インサイドセールスを外部に委託する場合は、記録のルールを契約前にすり合わせておくことが重要です。どのツールに、どの項目を、どの粒度で残すのか。ここが曖昧だと、委託期間が終わったときに自社に何も残りません。株式会社リクエッジでは、架電の実行だけでなく、記録項目やステータス定義の設計も含めてご相談をお受けしています。社内に引き継げる形で記録を残すことを前提に進めたい場合は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

架電記録はスプレッドシートでも十分ですか?

少人数で始める段階であれば、スプレッドシートでも十分に機能します。大切なのはツールではなく、ステータス定義と必須項目が決まっていることです。担当者が増えて同時編集や履歴管理が必要になった段階で、CRMへの移行を検討するのが現実的です。

不在や受付NGの記録まで細かく残す必要はありますか?

詳細な文章は不要ですが、結果と時間帯は残すべきです。何曜日の何時に不在だったかが蓄積されると、つながりやすい時間を推測できます。受付で名前を伺えた場合は、次回の取り次ぎに使えるので必ず記録します。

会話メモはどのくらいの長さが適切ですか?

目安は数行で、次の担当者が会話の続きを始められる量です。相手の発言、検討時期、こちらの約束事、次回アクションが入っていれば足ります。長文よりも、主観を減らして相手の言葉を残すことを優先してください。

連絡停止を希望されたリードはどう扱えばよいですか?

他のステータスとは明確に分け、電話・メールなど全チャネルで連絡を止める運用にします。リストを再取り込みした際に復活しないよう、重複チェックの仕組みも確認しておくと安心です。個人情報の扱いや法令面の詳細は、専門家に確認することをおすすめします。