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人材紹介・派遣会社の新規開拓インサイドセールス|求人ニーズを掴む架電設計

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • 人材紹介・派遣の新規開拓は、商材説明よりも「今どのポジションで採用に困っているか」を最初の数十秒で聞き出す設計が成果を左右します。
  • 紹介(成功報酬)・派遣(稼働課金)・RPO(業務委託)では相手の検討軸と決裁者が異なるため、同じスクリプトを使い回さないことが重要です。
  • アポのゴールは「会社紹介」ではなく「求人票の受領」や「具体ポジションの要件ヒアリング」に置くと、受注までの距離が縮まります。

結論:人材の新規開拓は「採用課題の有無」を最速で見極める

人材紹介・派遣会社の新規開拓インサイドセールスで最も大切なのは、自社サービスを丁寧に説明することではなく、相手企業が今まさに採用で困っているポジションがあるかを短時間で確認することです。人材サービスは、相手に採用ニーズがない時期にどれだけ説明しても受注になりません。逆に、欠員や増員の計画がある企業には、短い会話でも具体的な打ち合わせにつながります。

筆者はアデコで営業統括マネージャーとして営業戦略立案やインサイドセールスのSVを担い、独立後は人材紹介ITサービスのBDRを支援して1日1件のアポを獲得してきました。その経験から言えるのは、人材業界のISは「件数を多くかけること」と同じくらい「ニーズのない企業から早く離れること」が重要だという点です。

この記事の前提:ここでいう新規開拓は、取引のない法人に対して電話・メールで接点をつくり、求人のヒアリングや契約の打ち合わせを設定する活動を指します。

紹介・派遣・RPOで変わる「相手の検討軸」

同じ人材サービスでも、商流によって相手が気にするポイントと話すべき相手が変わります。現場でよくあるのは、紹介向けのトークをそのまま派遣の開拓に流用し、話がかみ合わなくなるケースです。まずは違いを整理しておきましょう。

商流相手の主な関心話すべき相手の例アポのゴール例
人材紹介採用難易度の高いポジションを、いつまでに、どんな人材で埋めるか人事責任者、採用担当、事業部長求人票の受領、要件ヒアリングの場
人材派遣繁忙期や欠員を、いつから何名、どのスキルで補えるか現場の部門長、総務・購買発注予定の確認、取引口座開設の相談
RPO(採用代行)採用業務の工数、母集団形成の仕組み、採用体制そのもの人事部長、経営層採用プロセス全体の課題整理の打ち合わせ

紹介は「ポジション単位」、派遣は「期間と人数」、RPOは「採用の仕組み」が話の中心です。この軸が違うと、ヒアリングで聞くべき項目も、キーマンも変わります。たとえば派遣では人事より現場の部門長が実質的な発注判断をしている企業もあり、人事部に電話して「派遣は現場で決めています」と言われたら、その時点で部署を切り替える判断が必要です。

求人ニーズを掴むためのリスト設計

人材業界のISは、リストの質が成果をほぼ決めます。採用ニーズは外から見えるシグナルがあるため、それを優先順位に反映させるのが基本です。

優先度を上げるシグナル

  • 求人媒体や自社採用ページで、同じ職種の募集を長期間掲載している
  • 新拠点の開設、新規事業の立ち上げ、増床などのリリースが出ている
  • 同じ職種の求人を短期間で繰り返し出している(定着や充足に課題がある可能性)
  • 専門職(エンジニア、施工管理、経理など)の募集で、条件が高めに設定されている

優先度を下げてよいケース

  • 直近で採用を凍結している、または募集がまったく見当たらない
  • 過去の架電で「取引先は固定している」と明確に回答があり、時期の言及もない

この段階で、求人内容をリストのメモ欄に残しておくと、架電時に「御社で募集されている○○職について」と具体的に切り出せます。一般的な会社紹介の電話と違い、相手の状況に触れた電話は話を聞いてもらえる確率が上がります。

求人情報や企業情報の取得・利用方法については、各媒体の利用規約や個人情報保護法の考え方を確認してください。詳細は専門家への確認をおすすめします。

受付・担当者別のトーク例

人材会社からの電話は、受付で「営業電話」と判断されやすい傾向があります。そのため、用件を短く具体的にし、相手側の業務に関係する話だと伝わる切り出しが有効です。

受付での切り出し(紹介の場合)

「突然のお電話失礼いたします。株式会社○○の山田と申します。御社で募集されている経理職の採用の件で、人事ご担当の方にお取り次ぎいただけますでしょうか。」

「どういったご用件ですか」と聞かれた場合は、「経理経験のある方のご紹介が可能か、採用状況を確認させていただきたくお電話しました。2〜3分ほどで終わります。」と、目的と所要時間を添えます。

担当者につながった後

「お忙しいところ失礼いたします。株式会社○○の山田と申します。採用ページで経理職の募集を拝見しました。現在、充足の見通しはいかがでしょうか。もし応募はあるものの要件に合う方が少ないようでしたら、条件に近い候補者のご紹介ができるか確認させてください。」

派遣の場合

「来月以降、繁忙期や欠員で人員を補いたいご予定はございますか。期間や人数が決まっていなくても、事前にスキル要件だけ伺っておくと、必要になった時点ですぐにご提案できます。」

よくある断りへの切り返し

「取引先は決まっています」と言われた場合は、無理に押し込まず、次の接点を残します。

「承知しました。既存のお取引先で充足が難しいポジションが出たときだけ、比較候補としてお声がけいただければ十分です。参考までに、今いちばん採用に時間がかかっている職種だけ教えていただけますか。」

この「今いちばん困っている職種」を聞く質問は、ニーズの有無を見極める材料にもなり、次回架電のタイミング判断にも使えます。

受注につながるヒアリング項目

アポを取ること自体が目的になると、営業担当が訪問しても「情報交換」で終わってしまいます。人材サービスでは、次のような項目をISの段階で押さえておくと、商談の質が大きく変わります。

  1. ポジションと人数:どの職種を何名、いつまでに必要としているか
  2. 採用の背景:欠員補充か、増員か、新規事業か
  3. 現在の採用手段:媒体、他社紹介、リファラルなど、どこまで試しているか
  4. 詰まっている工程:応募が来ない、書類で落ちる、内定辞退が多い、など
  5. 決裁の流れ:紹介手数料や派遣単価の判断を誰がするか
  6. 条件の幅:年収レンジや時給の目安、譲れる条件と譲れない条件

特に「詰まっている工程」は重要です。応募が来ないのか、来ても要件に合わないのかで、提案すべき内容が変わります。RPOの開拓であれば、この工程の話がそのまま提案の入り口になります。

アポのゴールを「会社紹介の場」ではなく「求人票をいただく」「ポジション要件を詳しく伺う」に設定すると、営業担当が受け取るアポの質がそろいます。

継続接点の設計:今はニーズがない企業をどう扱うか

人材ニーズは時期で変わります。今日「予定はない」と言った企業が、数か月後に急な欠員で困ることは珍しくありません。そのため、断られた企業をすぐにリストから外すのではなく、再アプローチの時期と理由を記録しておくことが大切です。

  • 「期末後に採用計画を見直す」と言われたら、その時期の少し前に再架電を設定する
  • 「今は派遣は使っていない」と言われたら、紹介や別商流のニーズも一度だけ確認する
  • 担当者名と、最も採用に困っている職種をCRMに残し、次回の切り出しに使う

新規開拓は、1回の電話で決まる商材ではありません。人材業界のISは、断られた企業との接点をどれだけ質高く残せるかで、半年後のパイプラインが変わります。

外部に任せる場合の考え方

人材会社の場合、社内のコンサルタントやキャリアアドバイザーが新規開拓の電話まで担うと、候補者対応の時間が圧迫されがちです。新規開拓だけを外部のISに任せる選択肢もありますが、その際は紹介・派遣・RPOの違いやヒアリング項目を理解している相手かどうかを確認してください。

費用は一般的な目安として、月額固定で30万〜70万円程度、成果報酬型ならアポ1件1万〜4万円程度です。人材業界の商流を理解していない外注先だと、件数は出ても求人につながらないアポが増えるため、アポの定義を事前にすり合わせることをおすすめします。

よくある質問

人材紹介の新規開拓は誰に電話すべきですか?

基本は人事責任者や採用担当ですが、専門職のポジションでは事業部長が要件を決めていることもあります。受付で「採用の件」と用件を明確にして取り次ぎを依頼し、要件の決定者が別にいる場合はその方の名前を確認しておきましょう。

派遣の新規開拓で人事に断られたらどうすればいいですか?

派遣は現場の部門長や総務・購買が発注判断をしている企業もあります。「派遣のご判断はどちらの部署で行われていますか」と確認し、担当部署へ切り替えるのが有効です。

求人を出していない企業に電話しても意味はありますか?

優先度は下げてよいですが、まったく無意味ではありません。採用計画は時期によって変わるため、次に計画を見直す時期を聞いて再アプローチの予定を立てておくと、将来のパイプラインになります。

人材会社のISで成果として見るべきものは何ですか?

アポ件数だけでなく、求人票の受領数や具体的なポジション要件を聞けた件数を見るのがおすすめです。受注に近い指標を見ることで、量と質のバランスが取りやすくなります。