決裁者・キーマンにたどり着く方法|組織の見立て方と電話・紹介のトーク例
この記事の要点
- 決裁者にたどり着く近道は、いきなり決裁者を狙うことではなく、組織と役割の仮説を立てたうえで、現場担当者から「紹介してもらう」ルートを設計することです。
- キーマンは役職だけでは決まらず、課題を最も感じている人・検討を前に進める人・最終承認する人の3役を分けて考えると、誰に何を聞けばよいかが明確になります。
- 決裁者に話すときは、機能説明ではなく経営上の論点(コスト・リスク・時間)に置き換えて一文で伝えると、短い会話でも次の機会につながりやすくなります。
結論:決裁者には「紹介ルート」でたどり着く
決裁者・キーマンにたどり着く方法として再現性が高いのは、組織の仮説を立て、現場に近い担当者から決裁者を紹介してもらうルートを設計することです。代表番号から社長や部長を指名しても、取り次いでもらえない場面が多く、取り次がれても相手にとって唐突な電話になりがちです。
一方で、課題を感じている現場担当者と先に話し、「この話は誰が判断するのか」「どう進めるのがよいか」を教えてもらえれば、決裁者に会う理由と順番がはっきりします。担当者を経由した紹介は、相手にとっても「部下が必要だと言っている話」になるため、聞いてもらえる確率が上がります。
決裁者攻略は「誰に最初に電話するか」ではなく「誰に、どの順番で、何を聞くか」の設計です。最初の会話相手は、決裁者でなくても構いません。
キーマンを3つの役割に分けて考える
「キーマン」という言葉はあいまいに使われがちです。BtoBの購買では、一人の人がすべてを決めることは少なく、複数の役割が関わります。次の3つに分けて考えると、誰に何を聞けばよいかが明確になります。
| 役割 | どんな人か | この人から得たい情報 |
|---|---|---|
| 課題保有者 | 日々の業務で困りごとを最も感じている人(現場リーダー、実務担当) | 現状のやり方、困っている具体的な場面、関係者の名前 |
| 推進者 | 社内で検討を前に進める人(課長、プロジェクト担当、情報システム担当など) | 検討の進め方、比較対象、社内で通すために必要な材料 |
| 決裁者 | 予算と最終判断を持つ人(部長、役員、社長) | 判断の基準、優先度、時期 |
企業規模によって、この3役の重なり方は変わります。小規模な会社では社長が3役すべてを兼ねることもありますし、大企業では推進者が複数部署にまたがることもあります。筆者はKDDIで大手企業向けのDX提案営業に携わってきましたが、大手企業向けの提案では、現場・推進部門・決裁者それぞれの関心に合わせた説明が欠かせません。インサイドセールスの段階でこの構造を少しでも把握しておくと、後工程の商談がスムーズになります。
架電前にできる組織の見立て
電話をかける前に、公開情報から組織の仮説を立てておきます。完璧な情報は不要で、「この会社なら、この業務はこの部署が持っていそうだ」という見当がつけば十分です。
- 会社のWebサイト:組織図、役員一覧、事業部の構成、拠点の数を確認します。
- 採用ページ・求人情報:募集職種の所属部署や業務内容から、部署の役割や体制が推測できます。
- プレスリリース・ニュース:新規事業、拠点開設、システム刷新など、検討のきっかけになる出来事を探します。
- 過去の接点:資料請求、展示会、セミナー参加などの記録があれば、その人の部署と役職を起点にします。
見立てた内容は、架電記録の「想定部署」「想定決裁者」のような欄に書いておき、電話で得た情報で上書きしていきます。仮説を持っていると、受付や担当者に対して「◯◯部の方でしょうか」と具体的に聞けるため、取り次ぎもされやすくなります。
個人の連絡先を独自に調べて直接電話する、といった方法は相手に不快感を与えるだけでなく、個人情報の取り扱いの面でも注意が必要です。会社として公開している窓口から順にたどるのが基本です。個人情報保護法などの詳細は専門家に確認してください。
担当者から決裁者を紹介してもらうトーク例
現場担当者と話せたら、課題を聞いたうえで、検討の進め方と決裁者について質問します。いきなり「決裁者は誰ですか」と聞くと警戒されるため、相手の手間を減らすための質問として聞くのがポイントです。
検討の進め方を聞く
「ありがとうございます。仮にこういった仕組みを検討するとなった場合、御社ではどなたが中心になって進められることが多いでしょうか。」
「導入を判断される際は、◯◯様のご判断で進められる形でしょうか。それとも部長様など、ほかの方にもご相談される流れになりますか。」
紹介を依頼する
「もしよろしければ、最初の打ち合わせに部長様にも15分だけご同席いただくことは可能でしょうか。後から◯◯様が説明し直す手間を減らせるかと思いまして。」
「部長様にお話を通していただく際に使える、1枚の要約資料をお送りします。◯◯様からご紹介いただく形で、改めてご挨拶のお電話をしてもよろしいでしょうか。」
紹介が難しいと言われた場合
「承知しました。では、まずは◯◯様と情報交換させていただき、必要になった段階で改めてご相談させてください。部長様が判断される際に、特に気にされる点があれば教えていただけますか。」
紹介を断られても、決裁者の判断基準を聞いておけば、次の提案材料になります。紹介は一度で決まらなくてもよく、担当者の味方になる姿勢を見せ続けることが大切です。
決裁者と直接話せたときの話し方
代表番号からの取り次ぎや紹介で決裁者と話せた場合、時間は短いと考えておきます。決裁者は機能の細部より、経営上の論点で物事を判断します。次のように、商品の特徴を経営の言葉に置き換えて一文で伝える準備をしておきます。
| 現場向けの言い方 | 決裁者向けの言い方 |
|---|---|
| 入力作業が自動化できます | 月末に集中する残業と、入力ミスによる手戻りを減らせます |
| 候補者の管理画面が見やすくなります | 採用の進み具合が部門ごとに把握でき、採用計画の遅れに早く気づけます |
| 通信状況を遠隔で監視できます | 現地対応の回数を減らし、障害時の復旧を早められます |
トーク例は次のとおりです。
「突然のお電話失礼いたします。株式会社◯◯の田中と申します。◯◯部の△△様からご紹介いただきお電話しました。月末の請求処理にかかる時間と手戻りを減らす取り組みについて、2分ほどお話しさせていただけますでしょうか。」
「△△様からは、月末に作業が集中していると伺いました。部長様として、この点は今期の優先度が高いテーマでしょうか。」
ここで「田中と申します」の後に紹介者の名前を出すのは、相手が電話を取り次いだ理由をすぐ理解できるようにするためです。紹介者の名前を出す場合は、事前に担当者の了承を得ておくことが前提です。了承なく名前を使うと、担当者との関係を損ねるおそれがあります。
決裁者との会話では、こちらが話す量よりも優先度と時期を聞くことを重視します。「今期は優先度が低い」と分かることも、無駄な追客を減らす意味で価値のある情報です。
たどり着けないときの見直しポイント
決裁者になかなか届かないときは、トークの問題だけでなく、アプローチの設計を見直します。
- 入口の部署が合っているか:課題を持っていない部署に電話していると、紹介も生まれません。部署の仮説を立て直します。
- 担当者に「話す理由」を渡しているか:担当者が上司に説明できる材料(要約資料、比較のポイント)を渡していないと、紹介は止まります。
- 決裁者に会う目的が明確か:「ご挨拶」だけでは時間をもらえません。「判断に必要な情報を15分で整理する」など、相手にとっての意味を示します。
- 時期が合っているか:予算策定や期初など、検討が動きやすい時期を担当者に聞き、その時期に合わせて再アプローチします。
また、決裁者へのアプローチは、最初から結果が出るものではありません。担当者との会話で得た組織情報を記録に残し、チームで共有しておくことで、同じ会社に別のタイミングで連絡するときの精度が上がります。
外部に任せる場合の考え方
決裁者へのルート設計は、商材の理解と、相手企業の組織を読む経験が求められる領域です。外部に任せる場合は、架電数だけでなく「担当者から得た組織情報をどう記録し、共有してくれるか」を確認しておくと、自社の営業資産として残ります。
株式会社リクエッジでは、リードの見極めとスクリプト設計を通じて、商談につながる相手に時間を使う体制づくりを支援しています。費用は内容に応じた個別見積りです。
よくある質問
最初から社長に電話するのは効果がありますか?
小規模な会社では社長が実務の判断もしているため、直接話すのが近道になることがあります。一方、ある程度の規模がある会社では、現場の課題を把握しないまま社長に話しても具体的な検討につながりにくいため、企業規模に応じて入口を使い分けるのがよいでしょう。
担当者に決裁者を聞くと嫌がられませんか?
「誰が決めるのですか」と直接聞くと、担当者を軽んじているように受け取られることがあります。「検討する場合はどなたと進められますか」「後から説明し直す手間を減らすには」など、相手の負担を減らす目的で聞くと答えてもらいやすくなります。
決裁者の名前が分からないまま架電してもよいですか?
問題ありません。部署名と役割で「◯◯部で△△をご担当されている方」と伝えれば取り次いでもらえることがあります。電話で得た名前や役割は記録に残し、次回以降の架電に生かします。
決裁者に会えたら、インサイドセールスが商談まで担当すべきですか?
体制によりますが、決裁者と話せた段階で、フィールドセールスや責任者が同席する場を設定するのが一般的です。インサイドセールスは、担当者との会話で得た課題や組織の情報を整理して引き継ぐ役割を担うと、商談の質が安定します。