インサイドセールスの基礎

中小企業・スタートアップのインサイドセールス|1人目をどう選ぶか

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • 中小企業・スタートアップのインサイドセールスの1人目には、「代表や既存営業の兼務」「専任の採用」「外部への委託」の3つの選択肢があります。
  • 売り方がまだ固まっていない段階では兼務や外部との共同設計で型を作り、型ができてから専任を採用するほうが、採用のミスマッチを減らせます。
  • 少人数で成果を出す鍵は、対象顧客を絞り込み、商談を受ける時間を先に確保し、記録を残して改善できる状態をつくることです。

結論:1人目は「売り方の型ができているか」で選ぶ

中小企業やスタートアップがインサイドセールスを始めるとき、最初に悩むのが「誰がやるか」です。選択肢は大きく3つあります。

  1. 代表や既存の営業担当が兼務する
  2. 専任のインサイドセールス担当を採用する
  3. 外部(代行会社やフリーランス)に委託する

どれが正解かは、自社の「売り方の型」がどこまでできているかで変わります。誰に、どんな切り口で話せば商談になるかがある程度分かっているなら、専任採用や外部委託で量を増やす段階です。まだ分かっていないなら、まずは兼務や外部との共同設計で型を作ることが先になります。

判断の軸:型がないまま専任を採用すると、採用された人が手探りで設計から始めることになり、成果が出るまで時間がかかります。型を作ってから人に渡す、という順番を意識すると失敗が減ります。

段階ごとの目安を整理すると、次のようになります。

自社の段階1人目の現実的な選択
誰に売るかを模索している代表・既存営業の兼務、または外部と共同で設計
売れる相手と切り口がある程度見えてきた外部委託で量を試す、または専任の採用準備
型ができ、件数を増やしたい専任の採用、外部委託の拡大

3つの選択肢の比較

観点代表・既存営業の兼務専任の採用外部への委託
始めるまでの早さすぐ始められる採用活動に時間がかかる契約後、準備期間を経て開始
費用の性質追加費用は少ないが、本来業務の時間を使う人件費、採用費、教育の時間委託費(月額固定、成果報酬、時間課金など)
商材理解深い入社後に習得が必要情報共有の質に左右される
継続性本業が忙しくなると止まりやすい安定するが、退職時に途切れるリスク契約期間に依存する
ノウハウの蓄積個人の頭の中に残りやすい社内に蓄積しやすい記録や報告を受け取る仕組み次第

外部に委託する場合の費用は、一般的な目安として、月額固定で30万〜70万円程度、成果報酬型ではアポ1件あたり1万〜4万円程度、時間単価型では1時間あたり2,000円程度から(専門性が高い場合は3,000円程度から)といった水準です。業務範囲や商材によって変わるため、見積りで内訳を確認することが大切です。

選択肢1:代表・既存営業が兼務する場合

創業期や、まだ売り方が固まっていない段階では、代表や既存の営業担当が自ら電話をかけるのが最も学びの多い方法です。商材を一番よく知る人が顧客の反応を直接聞けるため、どの切り口が響くのかを早く見つけられます。

一方で、兼務には「本業が忙しくなると止まる」という弱点があります。続けるためには次の工夫が有効です。

  • 架電する時間帯を週の予定に固定する(例:火曜と木曜の午前)
  • 1回の架電時間を短めに区切り、集中して行う
  • 結果は簡単でもよいので毎回記録する
  • 反応の良かった言い回しをメモし、スクリプトの素材にする

代表が電話をかける場合、冒頭で立場を伝えると話を聞いてもらいやすくなることがあります。

「株式会社〇〇の代表をしております△△と申します。私どもは〇〇業界向けに△△のサービスを提供している会社で、今日は貴社の△△の運用状況について、少しだけお話を伺えればと思いご連絡しました」

このように、売り込みではなく「話を伺いたい」という姿勢を前面に出すと、相手の警戒心が下がりやすくなります。

兼務で得た手応えや断られた理由は、後に専任や外部へ引き継ぐ際の貴重な材料になります。短いメモでも残しておきましょう。

選択肢2:専任を採用する場合

売り方の型ができてきた段階で、量を増やすために専任を採用するのは自然な流れです。ただし、少人数の会社での1人目の採用には特有の難しさがあります。

1人目の専任に求めたい資質

  • 決まった手順をこなすだけでなく、反応を見て工夫できる
  • 断られても気持ちを切り替え、記録を続けられる
  • 聞いた内容を正確に言葉にして残せる
  • 営業担当や代表と率直に意見交換できる

経験者であっても、前職の商材や顧客層が違えば、自社でそのまま成果が出るとは限りません。採用前に、自社のスクリプトや対象リスト、アポの定義がどこまで整っているかを確認し、足りない部分は入社後の最初の課題として明示しておくとよいでしょう。

また、1人目は相談相手がいないため孤立しがちです。週に1回は録音を一緒に聞く、商談の結果を共有するなど、関わりの時間を意識して作ることが、定着と成果の両方に効いてきます。

採用時の面接では、実際に自社の商材について短い架電のロールプレイをしてもらうのも一つの方法です。上手に話せるかどうかよりも、相手役の反応に合わせて質問を変えられるか、終わった後に自分のトークを振り返って改善点を言葉にできるかを見ると、入社後の伸びしろを判断しやすくなります。

選択肢3:外部に委託する場合

社内に時間も経験者もない場合、外部に委託するのも現実的な選択肢です。中小企業やスタートアップが委託する場合は、次の点に注意すると失敗を避けやすくなります。

  • 任せきりにしない:商材の強みや顧客の情報は依頼側からしか提供できません。最初の情報共有と、定期的な振り返りの時間は必ず確保します。
  • 成果の定義を決める:どんな条件を満たしたらアポとするかを文章で合意します。
  • 記録を受け取る:アポにならなかった理由や、反応の良かった切り口も報告してもらい、社内に残します。
  • 小さく始める:最初から大きな契約にせず、対象を絞って試せる範囲から始めます。

外部委託の大きな利点は、経験のある人の視点で設計と実行を進められることです。委託期間中に得られた記録やスクリプトを社内の資産として残せれば、その後に専任を採用する際の土台にもなります。

委託前に社内で準備しておきたいのは、商材の説明資料、既存顧客の業種や規模の傾向、よくある質問と回答、競合との違い、商談を受けられる日時の枠です。これらがそろっているほど立ち上がりが早くなり、委託費用を「準備」ではなく「実行」に使えるようになります。完璧な資料である必要はなく、社内で普段話している内容を書き出すだけでも十分な材料になります。

少人数で成果を出すための絞り込み

どの選択肢をとっても、中小企業やスタートアップのインサイドセールスでは、使える時間が限られています。そのため「何をやらないか」を決めることが重要です。

  1. 対象顧客を1つに絞る:業種や規模を広げすぎず、最も商談になりやすい層から始めます。
  2. リードの種類を絞る:問い合わせや展示会名刺などの反響リードがあるなら、新規開拓より先にそちらに対応します。
  3. 商談を受ける時間を確保する:アポが取れてもすぐに商談できなければ、相手の関心は薄れます。商談の空き枠を先に決めます。
  4. 指標を絞る:最初は架電数、担当者との会話数、アポ数、商談成立数の4つ程度で十分です。

筆者は独立後、SaaS企業や人材紹介ITサービスなどのインサイドセールスを支援してきました。少人数で取り組む場合に特に大切なのは、対象と役割を絞り込み、限られた時間を「会うべき相手」に集中させることです。リードの見極めによって時間あたりの商談数を高めるという考え方は、人数が少ない組織ほど効果を発揮しやすいと考えています。

外部に任せる場合の考え方

中小企業やスタートアップが外部に任せる場合、「全部を任せる」か「何もしない」かの二択で考える必要はありません。設計だけを一緒に行う、立ち上げの数か月だけ実行を任せる、時間単位で必要な分だけ依頼するなど、段階に応じた使い方ができます。

株式会社リクエッジでは、設計・スクリプト作成(目安:10万円〜/一式)、架電実行の時間契約(目安:3,500円〜/時間、月40時間〜)、商談創出パッケージ(目安:10万円〜/月+アポ1件1.5万円〜)など、規模に合わせた形でご相談いただけます。いずれも税別で、内容に応じて個別にお見積りします。

よくある質問

社員数が少なくてもインサイドセールスは必要ですか?

必ずしも専任の部署は必要ありませんが、見込み顧客を見極めて商談をつくる機能はどの規模の会社でも役立ちます。まずは代表や営業担当が時間を区切って取り組むところから始められます。

インサイドセールスの1人目は未経験者でも大丈夫ですか?

可能ですが、スクリプトや対象リスト、アポの定義などの型が社内にない場合は、未経験者が一から設計するのは負担が大きくなります。型を先に用意するか、経験者の支援を受けられる環境を整えることをおすすめします。

外部に委託するなら最低どのくらいの期間が必要ですか?

商材や対象によって異なりますが、記録を集めて改善するまでの時間を考えると、1か月だけでは判断しにくいことが多いです。最初に評価の時期と基準を決めておくと、継続するかどうかを判断しやすくなります。