インサイドセールスの立ち上げ手順|少人数で始める最初の90日計画
この記事の要点
- インサイドセールスの立ち上げは「設計(1〜30日)→実行と記録(31〜60日)→改善と仕組み化(61〜90日)」の3段階で進めると、少人数でも再現性のある形になります。
- 最初の30日で決めるべきは、対象顧客、アポの定義、トークの骨格、記録のルールの4点で、ここを飛ばして架電を始めると後から修正に時間がかかります。
- 90日時点のゴールは「アポ数の達成」よりも「どのリストに、どう話せば商談になるか」が言葉で説明できる状態にすることです。
結論:90日を3つの期間に分けて進める
少人数でインサイドセールスを立ち上げる場合、最初から完璧な体制を目指す必要はありません。むしろ、短い期間で「試す→記録する→直す」を回せる形を作ることが重要です。全体像は次のとおりです。
| 期間 | テーマ | 主なアウトプット |
|---|---|---|
| 1〜30日 | 設計 | 対象顧客の定義、アポの定義、トークの骨格、記録ルール、初期リスト |
| 31〜60日 | 実行と記録 | 架電・メールの実施、通話記録、断り理由の分類、初回の商談 |
| 61〜90日 | 改善と仕組み化 | スクリプト改訂版、KPIの基準値、引き継ぎフロー、次の90日の計画 |
90日後のゴール:「どのリストに、どんな切り口で話すと商談になるか」を、担当者以外の人にも説明できる状態です。これができれば、人が増えても外部に任せても再現できます。
ここでは、専任1〜2名程度、または営業担当が兼務で始めるケースを想定して、各期間でやることを具体的に整理します。
1〜30日:設計フェーズでやること
最初の30日は、電話をかける前の準備に使います。焦って架電を始めたくなりますが、ここで決めたことが後の改善の基準になります。
- 対象顧客を言葉にする:業種、従業員規模、地域、部署、役職を決めます。既存顧客のうち、商談が進みやすかった企業の共通点から考えると現実的です。
- アポの定義を決める:「誰が出席するか」「何が確認できていればよいか」「商談の形式」を営業担当と合意します。ここが曖昧だと、件数を巡って社内で揉める原因になります。
- トークの骨格を作る:冒頭のあいさつと用件、相手に聞く質問、よくある断りへの返し、商談の提案、の4部品を用意します。
- 記録のルールを決める:架電結果の分類(不在、受付で断り、担当者と会話、アポなど)と、CRMに残す項目を決めます。
- 初期リストを用意する:まずは数百社程度の、条件に合う企業に絞ったリストで十分です。いきなり大量のリストを用意すると、対象が曖昧なまま件数をこなすことになりがちです。
この段階で、受け手となる営業担当や代表の「商談を受けられる時間枠」も確保しておきます。せっかくアポが取れても、商談日が数週間先になると相手の関心が下がってしまいます。
31〜60日:実行と記録フェーズでやること
設計ができたら、実際に架電を始めます。この期間の目的は、アポを取ること以上に「反応のデータを集めること」です。
毎日の運用
- 架電時間を予定に固定する(兼務の場合は特に重要です)
- 通話ごとに結果を分類して記録する
- 会話できた相手の言葉を、要約せずにそのまま残す
- 断られた理由を「時期」「予算」「他手段で対応済み」「担当違い」などに分類する
週1回の振り返り
- 録音を1〜2件選び、営業担当と一緒に聞く
- 反応の良かった冒頭、悪かった冒頭を比べる
- 商談に進んだ案件の結果を共有する
最初のうちは、冒頭でつまずくことが多いはずです。たとえば次のように、用件を短く伝え、相手に考えてもらう問いで終える形を試してみてください。
「株式会社〇〇の△△と申します。〇〇業界の企業様向けに△△の効率化をご支援している会社です。本日は、貴社で△△をどのように運用されているかを少しだけ伺いたくてご連絡しました。今、どなたがご担当されていますか」
この時点の数字は、まだ評価の材料ではなく、基準値を作るための材料です。少ない件数で結論を出さず、記録を貯めることを優先します。
受付で断られることが続く場合は、担当部署名を具体的に伝える、担当者の名前を事前に調べる、時間帯を変えるといった工夫を試します。何を変えたかも記録しておくと、61日目以降の改善でどの工夫が効いたかを判断できます。
61〜90日:改善と仕組み化フェーズでやること
1か月分の記録が貯まると、改善の手がかりが見えてきます。この期間は、次の順で見直しを行います。
- リストを見直す:会話が成立しやすい業種・規模と、そうでない層を比べ、優先順位を付け直します。
- スクリプトを改訂する:反応の良かった切り口を標準にし、多かった断り文句への返しを追加します。
- KPIの基準値を置く:架電数、接続数、会話数、アポ数、商談化数について、自社の実績から当面の目安を設定します。他社の数字ではなく、自社の記録を基準にすることが大切です。
- 引き継ぎフローを固める:アポを営業に渡すときの記入項目と、商談後に結果を返す方法を決めます。
- 次の90日の計画を立てる:人を増やすか、対象を広げるか、外部の力を借りるかを判断します。
ここで作ったスクリプトや記録ルールは、担当者が変わっても使える「資産」になります。立ち上げを担った人の頭の中だけに残さないよう、文書として残しておきましょう。
また、90日の時点で一度、営業担当や経営層と「この取り組みを続けるか、どう広げるか」を話し合う場を設けておくと、インサイドセールスが社内で正式な機能として位置づけられやすくなります。報告では、アポ数だけでなく、分かったこと(反応の良い層や切り口)と、次に試すことをセットで伝えると、判断がしやすくなります。
少人数での役割分担と1週間の進め方(例)
少人数で回す場合、誰が何を担うかを先に決めておかないと、立ち上げの作業が特定の人に偏ってしまいます。最低限、次の3つの役割を誰が持つかを決めておきます。
- 架電担当:リストへの架電・メール、結果の記録を行います。
- 商談担当:アポを受けて商談を行い、結果を架電担当に返します。代表や営業責任者が兼ねることも多い役割です。
- 振り返りの進行役:週1回の振り返りを主催し、スクリプトやリストの修正を決めます。架電担当と商談担当のどちらかが兼ねても構いませんが、決めておくことが大切です。
1週間の進め方は、たとえば次のような形が考えられます。
| 曜日 | 主な作業 |
|---|---|
| 月曜 | 今週のリスト確認、前週の商談結果の共有 |
| 火〜木曜 | 架電・メールの実行と記録(時間帯を固定) |
| 金曜 | 録音の振り返り、断り理由の集計、スクリプトの修正 |
あくまで一例ですが、「実行する日」と「振り返る日」を分けておくと、記録が溜まったまま放置される状態を防げます。兼務の場合も、架電の時間をまとまった枠で確保するほうが、短い時間を細切れにするより集中しやすくなります。
立ち上げでつまずきやすいポイント
少人数での立ち上げで特に起きやすいつまずきを挙げます。
| つまずき | 起きる理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 兼務で架電時間が確保できない | 目の前の商談や事務作業が優先される | 架電の時間帯を予定表に固定し、例外を作らない |
| 数日で成果を判断してしまう | 件数が少なく、偶然の結果に左右される | 最初の1か月は記録を貯める期間と割り切る |
| アポが商談にならない | アポの定義が営業と合っていない | 商談後に結果を返してもらい、定義を見直す |
| スクリプトが増えすぎる | 思いつきで修正を重ねる | 改訂は週1回の振り返りでまとめて行う |
| 担当者が孤立する | 断られ続けて気持ちが続かない | 録音の振り返りを複数人で行い、良い点も共有する |
現場でよくあるのは、担当者を1人にせず、録音を一緒に聞いて具体的な言い回しを一緒に考える時間を設けているチームほど、立ち上げ期のつまずきから早く抜け出せるというケースです。
外部に任せる場合の考え方
社内に経験者がいない場合、1〜30日の設計フェーズだけを外部と一緒に行う方法があります。設計の考え方を最初に押さえておけば、実行は社内でも進めやすくなります。また、31〜60日の実行を外部に任せ、記録と改善のノウハウを受け取ってから内製化する方法もあります。
株式会社リクエッジでは、スクリプト作成を含む設計支援(目安:10万円〜/一式、税別・個別見積り)から、時間契約での架電実行まで、立ち上げの段階に合わせた支援を行っています。どこまで社内で行うべきか迷っている段階でもご相談いただけます。
よくある質問
インサイドセールスは何人いれば立ち上げられますか?
専任1名、あるいは営業担当の兼務でも立ち上げは可能です。人数よりも、架電の時間を確保できるか、商談を受ける側の時間枠があるかの方が成果に影響します。
立ち上げ時にツールはどこまで必要ですか?
最初は架電ができる環境と、結果を記録できるCRMやスプレッドシートがあれば十分です。記録ルールが固まり、件数が増えてから必要なツールを選ぶほうが無駄がありません。
90日で成果が出なかったらやめるべきですか?
アポ数だけで判断するのは早いかもしれません。リストの絞り込みやスクリプトの改善で伸びる余地があるか、記録をもとに検討してから判断することをおすすめします。記録が残っていれば、外部に相談する際の材料にもなります。
最初のリストは何社くらい用意すればよいですか?
条件に合う企業に絞った数百社程度から始めるのが扱いやすい規模です。反応を見て対象を調整するため、最初から大量に用意する必要はありません。