業種・地域別

IT・無形商材のテレアポのコツ|伝わらない商材を「課題」で売る架電術

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • IT・無形商材のテレアポでは、製品名や機能から話し始めず、相手の業務で起きている具体的な困りごとから切り出すのが基本です。
  • 電話では全体像を説明しきれないため、「一言で何が変わるか」と「誰の手間が減るか」を事前に一文に絞っておく必要があります。
  • 技術的な質問は無理に答えず、確認して商談で回答すると伝えることが、信頼とアポの両方を守ります。

結論:IT・無形商材は「機能」ではなく「業務の困りごと」で話す

IT・無形商材のテレアポがうまくいかない最大の原因は、見えないものを電話で説明しようとすることです。クラウドサービス、ネットワーク、IoT、業務システム、コンサルティングといった商材は、形がないうえに仕組みが複雑で、電話の短い時間では相手の頭の中に像を結びにくいのです。

そこで発想を逆にします。製品の説明から入るのではなく、相手の業務で起きている具体的な困りごとを先に言葉にし、「それが減る手段がある」とだけ伝えてアポにつなげます。商材の詳細は商談で画面や資料を使って説明すればよく、電話の役割は「この人の話を聞く価値がありそうだ」と思ってもらうことに限定するのがコツです。

筆者はKDDIで大手企業向けのDX提案営業や、大手自動車会社向けのコネクテッドカー通信の企画営業を経験してきました。通信やIoTのような商材は、一般に、技術的に正しい説明を重ねるほど相手が離れていきやすい傾向があります。伝わりやすいのは「御社のこの業務がこう変わる」という話です。

なぜIT・無形商材は電話で伝わりにくいのか

有形商材と比べたときの難しさを整理すると、トークで何を補うべきかが見えてきます。

難しさ電話で起きることトークでの補い方
形がない相手が完成形をイメージできない導入後の業務の場面を一つだけ描写する
仕組みが複雑専門用語が増えて相手が置いていかれる用語を業務の言葉に言い換える
効果が間接的「便利そう」で止まり、必要性が生まれない今かかっている手間や時間を相手に言ってもらう
比較対象が多い「似たものを使っている」で終わる既存ツールとの違いを一点だけ示す
関係者が多い担当者が自分では決められない誰が困っているかを先に確認する

この表の右列が、そのままスクリプトに入れるべき要素です。特に「今かかっている手間を相手に言ってもらう」ことは重要で、こちらが効果を説明するよりも、相手自身が課題を口にしたほうが商談への動機が強くなります。

「一言で何が変わるか」を一文に絞る

架電前に必ず準備したいのが、商材の価値を一文で言える状態にしておくことです。目安は、相手が聞き返さずに理解できる長さです。

悪い例

「弊社はクラウド型の統合管理プラットフォームを提供しておりまして、各種システムとAPI連携し、データを一元化してダッシュボードで可視化できるサービスです。」

良い例

「複数の管理画面を行き来して集計している作業を、一つの画面で済ませられるようにするサービスです。」

良い例には専門用語がなく、「誰の、どの作業が、どう変わるか」が入っています。この一文を作るときは、次の3点を埋めるとまとまります。

  • 誰の:経理担当、現場リーダー、情報システム担当など
  • どの作業が:集計、転記、問い合わせ対応、障害時の確認など
  • どう変わるか:不要になる、自動になる、一か所で済む、など

筆者はフードデリバリー一元管理SaaSのISを支援し、1日平均約2件・最高5件のアポを獲得しました。こうした機能が多い商材ほど、たとえば「複数の注文端末を一つにまとめられる」のように、伝える価値を一点に絞る準備が欠かせません。

課題起点のトーク例

課題起点のトークは、「よくある困りごとの提示」から「相手の状況の確認」へ進むのが基本形です。以下は業務システム系商材の例です。

冒頭

「お忙しいところ失礼いたします。株式会社○○の佐藤です。経理部門で、月末に複数のシステムからデータを集めて集計されている企業様にお電話しています。御社でも、月末の集計に時間がかかっていたりはしませんか。」

相手が「まあ、多少は」と答えた場合

「ありがとうございます。差し支えなければ、今はどのような流れで集計されていますか。たとえば、各システムから出力して表計算ソフトでまとめる形でしょうか。」

課題が見えた場合のクロージング

「その出力とまとめの作業を自動にできる仕組みがありまして、実際の画面を見ていただくのが一番早いと思います。30分ほどオンラインでお時間をいただけないでしょうか。来週の火曜か木曜でご都合はいかがですか。」

ポイントは、こちらが説明する時間よりも、相手が自社の業務を話す時間を長くすることです。相手が話した内容は、そのまま商談担当への引き継ぎ情報にもなります。

技術的な質問とIT部門への対応

IT商材では、電話口で技術的な質問を受けることがあります。「どのクラウドで動いていますか」「既存のネットワーク構成に影響はありますか」「セキュリティ認証は取得していますか」といった質問です。

原則:わからないことは推測で答えず、「正確にお答えしたいので、技術担当から商談の場でご説明します」と伝えます。曖昧な回答は、商談後の信頼を損ないます。

このとき、質問そのものを記録しておくことが大切です。技術的な質問が出るのは、相手が本気で導入を検討しているサインでもあります。商談担当には「ネットワーク構成への影響を気にされていた」と具体的に引き継ぎましょう。

IT部門と事業部門の攻め分け

  • 情報システム部門:運用負荷、セキュリティ、既存システムとの連携が関心事。導入の可否を判断する立場であることが多い
  • 事業部門:業務の手間や売上への影響が関心事。課題を最も強く感じている立場

課題起点のトークは事業部門に刺さりやすく、情シスには「既存環境への影響が小さいこと」を伝えるほうが響きます。情シス向けの技術的な質問をあらかじめ想定しておくことも大切ですが、基本は課題を感じている部門から入り、技術的な判断が必要な段階で情シスを巻き込む流れが自然です。

課題を相手に言ってもらうための質問の型

無形商材では、こちらが効果を説明するより、相手に自社の課題を話してもらうほうがアポにつながります。そのために、架電前にいくつかの質問の型を用意しておくと、会話が止まりにくくなります。

質問の型トーク例引き出したいこと
現状確認「今は、その作業をどなたがどのように対応されていますか。」業務の担当者と手順
手間の確認「その作業は、月にどのくらいの時間がかかっていますか。」課題の大きさ(相手自身の言葉で)
きっかけ確認「その作業で、ミスや手戻りが起きたことはありますか。」痛みを感じた具体的な場面
理想の確認「もし手間が減るとしたら、空いた時間を何に使いたいですか。」導入の動機、期待する効果
検討状況の確認「これまでに、仕組みを変えることを検討されたことはありますか。」過去の比較検討、見送りの理由

すべてを一度の電話で聞く必要はありません。冒頭で反応が良ければ「手間の確認」と「きっかけ確認」まで進み、反応が薄ければ「現状確認」だけで情報を残して再架電に回す、というように使い分けます。

また、相手が「検討したけれど見送った」と答えた場合は、むしろチャンスです。「見送られた理由を伺ってもよろしいですか」と続けると、価格なのか、運用負荷なのか、社内の合意なのかが見えます。その理由が自社商材で解消できるなら、アポの打診に自然につなげられます。

質問を重ねすぎると尋問のような印象になります。一つ質問したら、相手の答えに「なるほど、月末に集中するんですね」と一言返してから次に進むのがコツです。

外部に任せる場合の考え方

IT・無形商材のテレアポを外部に依頼する場合は、架電担当が商材を理解するまでの立ち上げ期間を見込んでおく必要があります。商材知識が浅いまま架電すると、技術的な質問で詰まったり、価値を一文で言えなかったりして、件数のわりにアポが増えません。

依頼先を選ぶ際は、IT分野の商材経験があるか、スクリプトを一緒に設計してくれるかを確認しましょう。時間単価型の場合、一般的な目安は2,000円〜程度ですが、専門性のある商材では3,000円〜程度が目安になります。安さよりも、商材を理解して課題起点で話せる体制かどうかを重視することをおすすめします。

よくある質問

IT商材のテレアポで専門用語は使わないほうがいいですか?

冒頭では避けるのが基本です。相手が情報システム部門で専門用語のほうが早く伝わる場合は、相手の言葉に合わせて使い分けましょう。

電話でデモや画面を見せられない場合、どう価値を伝えればいいですか?

導入後の業務の場面を一つだけ具体的に描写し、詳細は画面を見せられる商談で説明すると伝えます。電話では全体を理解してもらうことより、商談の時間をもらうことを目標にします。

「似たツールを使っている」と言われたらどうすればいいですか?

「今のツールで不便に感じている点はありますか」と聞き、相手の不満を確認します。そのうえで違いを一点だけ伝え、比較の材料として話を聞いてもらう形でアポを打診するのが有効です。

情報システム部門と事業部門、どちらに先に電話すべきですか?

業務の課題を解決する商材であれば、課題を感じている事業部門から入るほうが話が進みやすい傾向があります。インフラやセキュリティ系の商材であれば、情報システム部門が最初の窓口になります。