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SaaS企業のインサイドセールス|トライアル後のフォローとデモ獲得のコツ

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • SaaS企業のインサイドセールスは、トライアル登録・資料請求・アウトバウンドなどリードの入口ごとに動き方を変え、デモや商談につなげる役割を担います。
  • トライアル利用者へのフォローは「売り込み」ではなく「使いこなしの支援」として連絡し、利用状況や詰まっている点を聞いたうえでデモを提案すると受け入れられやすくなります。
  • SaaSでは解約されにくい顧客を増やすことも重要なため、アポの数だけでなく、商談化や受注につながる質の高いアポかどうかを見ることが欠かせません。

結論:SaaSのインサイドセールスは「入口別の見極め」と「デモへの橋渡し」が仕事

SaaS企業のインサイドセールスの主な役割は、さまざまな入口から入ってくるリードを見極め、デモや商談に橋渡しすることです。SaaSは無料トライアルやオンラインでの資料請求など、営業担当と話す前に製品に触れられる入口が多いのが特徴です。そのため、「誰に、いつ、どんな理由で連絡するか」の設計が成果を大きく左右します。

リードの入口ごとの、インサイドセールスの動き方を整理すると次のとおりです。

リードの入口相手の状態ISの主な動き
無料トライアル登録製品に触れている。使い方に詰まっている可能性利用状況の確認、使いこなし支援、デモ提案
資料請求・ホワイトペーパー情報収集段階のことが多い課題と検討時期のヒアリング、関心度の見極め
デモ・問い合わせ申込み関心が高い早急に連絡し、日程確定と事前ヒアリング
展示会・ウェビナー参加関心の幅が広い参加テーマに沿ったフォロー、ランク分け
アウトバウンド(新規開拓)製品を知らない課題の仮説を提示し、情報交換の場を打診

筆者は独立後、SaaS企業2社のインサイドセールスを支援してきました。そのうちフードデリバリー一元管理SaaSでは、1日平均約2件、最高で5件のアポを獲得しています。こうした現場で一貫して重視しているのは、架電の量だけでなく、リードを見極めて時間あたりの商談数を最大化することです。

トライアル利用者へのフォロー:「売り込み」ではなく「使いこなし支援」

トライアル登録者は、自分で製品を試そうとしている相手です。ここにいきなり「ご契約のご検討はいかがですか」と電話すると、まだ判断材料が揃っていない相手には負担になります。トライアル中のフォローは、使いこなしを支援する立場で連絡するのが基本です。

連絡のタイミングの考え方

  • 登録直後:お礼と、困ったときの問い合わせ先を案内する
  • 初期設定のころ:最初の設定や導入でつまずいていないかを確認する
  • トライアル終了前:評価の状況と、社内での検討の進み方を確認する

製品側で利用状況が見られる場合は、「ログインしていない」「特定の機能を使い始めた」といった動きに合わせて連絡内容を変えると、相手にとって意味のある電話になります。

トーク例:登録後、あまり使われていない相手

「お世話になっております。株式会社◯◯の◯◯です。先日は◯◯の無料トライアルにご登録いただき、ありがとうございました。初期設定のところで手間取られる方が多いので、何かお困りの点がないか確認のためにご連絡しました。今、少しだけお時間よろしいでしょうか」

トーク例:特定の機能を使い始めた相手

「◯◯の機能をお試しいただいているようでしたので、ご連絡しました。実際の運用に合わせた設定の仕方によって使い勝手がかなり変わる機能なので、もしよろしければ、貴社の運用を伺いながら30分ほど画面でご説明させていただけないでしょうか」

トライアル中のデモ提案は「製品の説明を聞いてください」ではなく、「御社の運用に合わせた使い方をお見せします」という形にすると、相手にとってのメリットが明確になります。

デモ・商談を獲得するためのヒアリングと打診

資料請求やウェビナー参加など、まだ製品に触れていないリードからデモを獲得するには、相手の課題を短く確認してから、デモの価値を相手の言葉で伝えることが大切です。

ヒアリングで確認したいこと

  1. 現在どのような方法でその業務を行っているか
  2. その方法で困っていること、手間がかかっていること
  3. 見直しの予定や時期、ほかに比較している手段
  4. 導入を決めるときに関わる人(部署、決裁者)

トーク例:資料請求者へのフォロー

「先日、◯◯の資料をダウンロードいただいた件でご連絡しました。資料をご覧になったきっかけを伺ってもよろしいですか。……なるほど、今は◯◯を複数の画面で管理されていて、確認に時間がかかっているんですね。それでしたら、まとめて管理したときに画面がどう変わるかを、実際にお見せするのが一番早いと思います。30分ほどオンラインでお時間をいただけませんか。来週の◯日か◯日でご都合いかがでしょうか」

「まだ情報収集段階なので」と言われたとき

「もちろん、今すぐご判断いただく必要はありません。情報収集の段階だからこそ、実際の画面をご覧いただくと比較の基準がつくりやすいと思います。ご検討の材料としてお使いいただければ十分です」

無理に押し込まず、相手が「見ておくと得だ」と感じられる理由を示すのがポイントです。

トーク例:アウトバウンド(製品を知らない相手)

製品を知らない相手には、製品名から入るより、相手が抱えていそうな課題の仮説から入るほうが話を聞いてもらいやすくなります。

「株式会社◯◯の◯◯と申します。◯◯業界の企業様で、◯◯の管理を複数のツールで行っていて、毎日の確認作業に時間がかかっている、というお話をよく伺います。貴社では、そのあたりはいかがでしょうか」

相手が「うちもそうだ」と反応すれば、そこから現状を伺い、デモの提案につなげます。「うちは問題ない」と言われた場合も、「ちなみに今はどのような方法で管理されていますか」と一歩だけ深めると、別の課題が見つかることがあります。仮説は、業界ごとに事前に複数用意しておくと、相手に合わせて使い分けられます。

SaaSのインサイドセールスで見るべき指標

SaaSは継続課金のビジネスモデルが多いため、契約後に使い続けてもらえるかが重要です。インサイドセールスの評価も、アポの数だけで判断すると、無理に取ったアポが増え、商談化率や受注後の定着に悪影響が出ることがあります。

指標見る理由
リードへの初回接触までの時間関心が高いうちに接触できているか
接続数・有効会話数架電の量と、実際に話せた量の確認
デモ・商談の獲得数インサイドセールスの直接の成果
商談化の割合獲得したアポの質(フィールドセールスが商談として扱えたか)
入口別の商談化の傾向どの入口のリードに時間を使うべきかの判断材料
受注・定着との関係アポの段階の見極めが、受注後の定着にもつながっているか

特に入口別の傾向を見ておくと、「トライアル登録者は商談になりやすいが、特定の業種は定着しにくい」といった学びが得られ、ヒアリング項目やアポの基準の見直しに活かせます。

SaaS企業がインサイドセールスを立ち上げる際の注意点

SaaS企業でインサイドセールスを立ち上げる、または強化する際に、現場でよくつまずくポイントを挙げます。

  • アポの基準が曖昧:「デモを見たいと言えばアポ」なのか、「課題と時期が確認できたらアポ」なのかが決まっていないと、フィールドセールスとの間で認識がずれます。
  • 製品理解が浅いまま架電する:SaaSは機能が多く、相手の質問に答えられないと信頼を失います。少なくとも、主要な課題と対応する機能の対応表は手元に用意します。
  • トライアル登録者を放置する:「自分で試しているから大丈夫」と考えて連絡しないと、使い方に詰まったまま終了してしまう利用者を取りこぼします。
  • カスタマーサクセスとの連携不足:アポ獲得時に聞いた相手の期待や課題が、受注後の担当に引き継がれないと、導入後のギャップが生まれます。

外部に任せる場合の考え方

SaaS企業がインサイドセールスを外部に任せる場合は、製品理解の深さと、アポの質の基準をどうすり合わせるかが重要です。成果報酬型でアポの数だけを追う契約にすると、商談化しにくいアポが増えるおそれがあるため、アポの定義を事前に明確にしておきましょう。

一般的な目安として、インサイドセールス代行の月額固定は30万〜70万円程度、成果報酬型のアポ単価は1万〜4万円程度です。株式会社リクエッジでは、SaaS企業のインサイドセールス支援の経験をもとに、スクリプト設計から架電までご相談をお受けしています。料金は個別見積りですが、目安として商談創出パッケージが10万円〜/月+アポ1件1.5万円〜(税別)です。IT・ネットワーク領域の知識を活かし、技術的な話題が出る商材にも対応しています。

よくある質問

SaaSのインサイドセールスはインバウンドとアウトバウンドのどちらを優先すべきですか?

まずはトライアル登録や資料請求などのインバウンドリードへの対応を優先するのが一般的です。すでに関心を示している相手のほうが商談につながりやすいためです。インバウンドが少ない段階では、狙う業界を絞ったアウトバウンドを組み合わせます。

トライアル登録者には全員に電話すべきですか?

可能であれば全員に一度は接触するのが理想ですが、件数が多い場合は、利用状況や企業の属性で優先順位を付けます。まだ使われていない相手には使い方の案内、使い始めた相手にはデモの提案、というように連絡内容も変えると効果的です。

SaaSのインサイドセールスにはどのような製品知識が必要ですか?

すべての機能を詳しく説明できる必要はありませんが、相手のよくある課題と、それに対応する機能や使い方は説明できる状態が望ましいです。技術的に深い質問は、無理に答えずデモや商談の場で専門の担当者から回答する形にします。

SaaSのインサイドセールスを外注しても製品理解は追いつきますか?

立ち上げ時に製品説明や想定問答を共有し、定例で架電内容を振り返る仕組みがあれば、十分に追いつけます。委託先がIT分野や近い業界の知識を持っているかも、選ぶ際の確認ポイントになります。