業種・地域別

地方企業がオンライン営業で商圏を広げる方法|商材の向き不向きと進め方

執筆:山崎 陸(株式会社リクエッジ 代表取締役) ・ 公開

この記事の要点

  • 地方企業がオンライン営業で商圏を広げる第一歩は、自社の商材が「遠隔で検討・購入できるか」を見極め、売れる範囲を現実的に決めることです。
  • 対面での付き合いがない相手には、事例・対応体制・担当者の顔といった「信頼の材料」を、電話・メール・オンライン商談のそれぞれで意識的に補う必要があります。
  • 地元の既存顧客で培った強みを言語化し、それが通用する業種・地域に絞って小さく始めると、少ない人員でも商圏を広げられます。

結論:「遠隔で売れるか」を見極め、接点をオンラインでつなぐ

地方企業が商圏を広げたいとき、オンライン営業は有力な手段です。ただし、すべての商材がそのままオンラインで売れるわけではありません。最初にやるべきことは、自社の商材やサービスが、遠隔で検討・購入・利用できるかを見極めることです。

そのうえで、見込み客を見つける段階から商談までを、電話・メール・Web会議でつなぐ仕組みをつくります。インサイドセールスはこの仕組みの中心となる役割で、見込み客への最初の接点づくりと、商談につなげるまでの関係構築を担います。

地方企業の多くは、地元での紹介や長年の付き合いによって顧客を得てきました。この関係性は大きな強みですが、商圏の外ではそのまま使えません。オンライン営業では、対面で積み上げてきた信頼を、別の形で補う工夫が必要になります。

オンライン営業に向く商材・向きにくい商材

商圏を広げられるかどうかは、商材の性質で大きく変わります。次の表で、自社の商材がどちらに近いかを確認してみてください。

判断の観点オンライン営業に向く工夫が必要
提供方法ソフトウェア、データ、遠隔でのサポート、郵送できる製品現地での施工、定期的な訪問が必要なサービス
説明のしやすさ画面共有や資料で価値が伝わる実物を見て触らないと良さが伝わらない
検討期間比較的短く、担当者の判断で進む長期で、複数回の対面を前提とする
アフターフォロー電話・オンラインで完結できるトラブル時に駆けつける必要がある

「工夫が必要」に当てはまる商材でも、あきらめる必要はありません。たとえば、施工やメンテナンスは提携先に任せ、自社は設計や提案に集中する、サンプルを送ってからオンライン商談を行う、といった方法で、遠隔でも検討できる形に変えられる場合があります。

大切なのは「全国どこでも売る」と決めることではなく、遠隔で対応できる範囲を自社で定義することです。対応範囲があいまいなままだと、受注後のサポートで無理が生じます。

地元での強みを「商圏外でも伝わる言葉」に変える

地方企業の強みは、地元では説明しなくても伝わっていることが少なくありません。長年の取引、地域での評判、担当者の人柄などは、紹介で顧客が増えていく理由になります。しかし、商圏の外の見込み客はそれを知りません。そこで、強みを言葉にし直す作業が必要です。

言語化のための問い

  • 既存顧客は、なぜ他社ではなく自社を選んでくれているのか
  • 既存顧客に共通する業種・規模・課題は何か
  • 自社が得意とする現場の条件(寒冷地、小ロット、短納期など)はあるか
  • 既存顧客から感謝された具体的な場面はどんなものか

たとえば「小ロットの特注品を短納期で対応してきた」という強みがあれば、同じ悩みを抱える企業は商圏の外にもいるはずです。その業種に絞ってアプローチすれば、遠い地域の会社であることは不利になりにくく、むしろ「わざわざ地方から連絡が来る理由」として受け止めてもらえます。

トーク例

「突然のお電話失礼いたします。○○県で精密部品の加工をしております株式会社○○の田中です。小ロットの特注品を短納期で対応してきた会社でして、ロットが小さくて加工先が見つかりにくい部品はございませんか。」

所在地と強みを冒頭でセットにすることで、相手は「なぜこの会社から電話が来たのか」をすぐに理解できます。

信頼の材料を各接点で補う

対面での付き合いがない相手から仕事を受けるには、相手が安心して検討できる材料をそろえる必要があります。オンライン営業では、接点ごとに意識して信頼を補いましょう。

接点補うべき信頼の材料具体例
電話会社の実在感、担当者の誠実さ所在地と事業内容を簡潔に名乗る、約束した時間を守る
メール読み返せる情報、具体性会社概要、対応範囲、事例の要約を簡潔に添える
Webサイト第三者から見た信頼感事例、対応エリア、問い合わせ後の流れを明記する
オンライン商談担当者の顔、会社の雰囲気カメラをオンにする、工場や事務所の写真を見せる

特にWebサイトは、電話を受けた相手が「どんな会社だろう」と調べる場所です。電話で話した内容とサイトの情報が一致していることが、商談前の安心感につながります。商圏外の顧客を想定するなら、対応エリアと遠隔での対応方法を明記しておくことをおすすめします。

小さく始めて商圏を広げる進め方

少ない人員でオンライン営業を始める場合は、対象を広げすぎないことが成功の条件です。次の流れで進めると、何が成果につながったかを確認しながら商圏を広げられます。

  1. 対象を一つに絞る:強みが活きる業種を一つ、または近隣の一つの都市圏から始めます。
  2. リストをつくる:その業種・地域の企業を、規模や課題の見込みで優先順位を付けて整理します。
  3. 電話とメールで接点をつくる:電話でつながらなければメールで要点を送り、時間を置いて再度電話します。
  4. オンライン商談で提案する:電話で聞いた課題をもとに、画面共有で具体的な提案を行います。
  5. 振り返って次の対象を決める:反応の良かった切り出しや業種を記録し、似た条件の業種・地域に広げます。

このとき、架電の結果や相手の反応を必ず記録に残しておきます。地方企業のオンライン営業では、営業担当が少人数のことが多いため、記録がないと担当者が変わったときにノウハウが失われてしまいます。

商圏外の顧客と契約する際は、納品やサポートの範囲、トラブル時の対応方法を事前に書面で明確にしておくと安心です。契約内容の詳細は専門家にご確認ください。

地方企業のオンライン営業でよくあるつまずき

オンライン営業を始めた地方企業で、現場でよく見られるつまずきと、その対策を整理します。

1. 地元向けの説明をそのまま使ってしまう

地元では「○○さんの紹介で」「いつもの件で」と通じていた話し方が、商圏外では通じません。初めて話す相手を前提に、会社紹介と用件を一から組み立て直す必要があります。スクリプトをつくる段階で、自社を知らない人に読んでもらい、伝わるかを確認しておくと安心です。

2. 架電が既存業務に押し出される

少人数の会社では、既存顧客からの問い合わせや受注対応が入るたびに、新規開拓の架電が止まってしまいます。「毎週この時間は架電だけ」と時間を確保し、その時間は既存業務の連絡を別の人が受けるといった取り決めが有効です。

3. オンライン商談の準備が不十分

電話でアポが取れても、オンライン商談で音声が聞き取りにくい、資料が画面共有向けになっていない、といった理由で印象を落とすことがあります。マイクやカメラ、画面共有用の資料は、商談前に一度社内で通し稽古をしておきましょう。

4. 成果が出る前にやめてしまう

商圏外の見込み客は、最初の接点から商談・受注までに時間がかかることがあります。最初の数週間で受注が出ないからといってやめるのではなく、接続できた件数、話を聞いてもらえた件数、商談になった件数というように、途中の段階を記録して改善点を探すことが大切です。

途中の段階を記録しておくと、「電話はつながるが話を聞いてもらえない」なら冒頭のトーク、「話は聞いてもらえるが商談にならない」なら打診の仕方、というように、直すべき場所が見えるようになります。

外部に任せる場合の考え方

地方企業では、オンライン営業を担える人材の採用が難しいこともあります。その場合、最初の対象選定やスクリプト設計、架電の立ち上げを外部に依頼し、うまくいった型を社内に引き継ぐ方法もあります。

依頼する際は、件数だけを追うのではなく、自社の強みを理解して言葉にしてくれる相手かどうかを確認しましょう。費用は一般的な目安として、月額固定で30万〜70万円程度、時間単価型で2,000円〜程度(専門性があれば3,000円〜程度)です。リクエッジも札幌を拠点に、オンラインで全国の企業のインサイドセールスを支援しています。

よくある質問

地方企業でもオンライン営業で全国の顧客を獲得できますか?

商材が遠隔で検討・利用できるものであれば可能です。まずは自社の強みが活きる業種や地域に絞り、電話・メール・オンライン商談で接点をつくる仕組みから始めるのがおすすめです。

対面でないと信頼してもらえないのではと不安です。

電話での誠実な対応、メールでの具体的な情報、オンライン商談でのカメラオンなど、接点ごとに信頼の材料を補うことで不安は小さくできます。重要な案件では、受注が近い段階で一度訪問する方法も有効です。

オンライン営業は何から始めればいいですか?

最初に、自社の商材が遠隔で対応できる範囲を決めます。次に、既存顧客が自社を選んでいる理由を言葉にし、その強みが通用する業種を一つ選んで架電を始めましょう。